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現代の大麻研究はイスラエルから始まった」と言われる。1964 年にラファエル・メコーラムらが THC の化学構造を世界で初めて解明 したのを起点に、その後の数十年で内因性カンナビノイドの発見や医療応用研究の進展に大きく寄与してきた。現在も世界有数の 医療大麻プログラム を運用しており、患者数・処方件数の規模で先頭グループに位置する。

概要

  • 科学的起点: 1964 年メコーラム & ガオニによる Δ9-THC 構造解明
  • 研究の継続: 1992 年アナンダミド(AEA)、1995 年 2-AG の同定など、エンドカンナビノイド・システム研究もイスラエルが中心
  • 医療大麻プログラム: 1990 年代から運用、保健省の医療大麻ユニット (IMCA) が管理
  • 患者規模: 人口比で世界最大級。多数の医療条件に対する処方が運用されている
  • 研究機関: ヘブライ大学、テルアビブ大学、テクニオン、ワイツマン研究所などが世界の研究の中心
  • 政策の特徴: 嗜好用は引き続き刑事規制の対象、医療大麻は医師の処方による厳格な管理

詳細

科学研究の歴史

1964 年: Δ9-THC の構造解明

イスラエルのヘブライ大学に所属していた ラファエル・メコーラム とその共同研究者 ヤヒエル・ガオニ は、レバノン産大麻樹脂を出発材料に、Δ9-THC の単離と構造決定 に世界で初めて成功した。これは現代カンナビノイド研究の出発点とされる。

1980 年代-90 年代: ECS の発見

メコーラム研究室を中心とする研究グループが、カンナビノイド受容体に結合する内因性物質 の探索を進めた:

  • 1988 年: CB1 受容体の同定(米国の研究グループとの協働)
  • 1992 年: アナンダミド(AEA)の同定 —— メコーラムらが命名(サンスクリット語の “ananda” = 至福に由来)
  • 1995 年: 2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の同定

これらの発見によって、エンドカンナビノイド・システム(ECS、別記事「エンドカンナビノイド・システム」参照)の概念が確立した。

2000 年代以降: 臨床応用研究の拡大

CB1/CB2 受容体・内因性リガンドのメカニズム解明と並行して、臨床応用研究 が拡大した。慢性疼痛、PTSD、てんかん、自閉スペクトラム症の周辺症状、化学療法に伴う悪心など、多領域での試験がイスラエル国内で実施されている。

医療大麻プログラム

イスラエル保健省の 医療大麻ユニット(Israel Medical Cannabis Agency、IMCA)が制度を管理している。

  • 対象疾患: 慢性疼痛、化学療法に伴う悪心・嘔吐、PTSD、HIV/AIDS 関連消耗、多発性硬化症の痙縮、てんかん、緩和ケアなど(具体的な対象範囲は時期により変動)
  • 処方権限: 認定を受けた医師による処方
  • 製品: 政府認可の生産者から供給される標準化された製品(THC 含有量・CBD 含有量が表示)
  • 流通: 認可薬局を通じた供給
  • 患者数: 数万人規模(2020 年代の推計、人口比でみると国際的にトップクラス)

研究機関

  • ヘブライ大学エルサレム校: メコーラム研究室の伝統。現在も大麻研究の中心
  • テルアビブ大学: 臨床研究、薬理研究の拠点
  • テクニオン(イスラエル工科大学): 化学・植物学・農学的アプローチ
  • ワイツマン研究所: 神経科学・分子生物学
  • 複数の医療センター: 臨床試験の実施機関(シェバ、ハダサ、ラビン医療センターなど)

産業との接続

イスラエルは医療大麻の 研究・栽培・流通の統合 が比較的進んでおり、バイオテクノロジー・医薬品スタートアップ が多数活動している。製品標準化、特定遺伝子型の選抜、剤形の開発などが研究機関と企業の協働で進められている。

政策の特徴

  • 嗜好用は刑事規制の対象 が継続。医療大麻と区別される
  • 2017 年 には少量の嗜好用所持に対する刑事手続きを行政罰化する政策が導入された(完全な非犯罪化ではなく刑事手続きの簡素化)
  • 国際薬物統制条約(1961 年単一条約)の枠組みに沿った運用

現在の論点・最新動向

大規模臨床試験の進展

イスラエル国内で実施されている 大規模長期試験 では、PTSD、慢性疼痛、自閉スペクトラム症の周辺症状などへの効果と安全性が継続的に評価されている。これらの結果は欧米の医療大麻プログラムにも影響を与えている。

臨床研究データベース

患者規模の大きさを活かし、長期処方下での実世界エビデンス(real-world evidence)の蓄積が進んでいる。慢性疼痛分野での観察研究などは、世界の医療大麻議論で頻繁に引用される。

国際協力

イスラエルの研究機関は、欧州・北米・アジア(日本を含む)の研究機関との国際協力を活発に行っている。日本の研究者・医療機関との連携事例も報じられている。

CBD 単一製剤の開発

Epidiolex(植物由来 CBD 製剤)の系列とは別に、イスラエル発の CBD 製剤・THC 製剤の医薬品候補開発が複数進められている。

まとめ

イスラエルは、1964 年の Δ9-THC 構造解明以来、現代カンナビノイド研究の中心 として位置づけられてきた。エンドカンナビノイド・システムの発見、医療大麻プログラムの運用、臨床試験の蓄積、関連企業の集積など、複数の側面で世界をリードしてきた経緯がある。日本国内では大麻草・大麻製品の所持・使用・栽培・輸出入は大麻取締法および関連法令により規制されており、医療上の判断は必ず医師等の専門家に相談する必要がある。

出典

出典 — Sources

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