HighWide 大麻情報メディア

基礎知識 歴史と社会

世界の大麻史 — 古代文明から現代の規制と多様化まで

· 更新

大麻草と人類の関わりは、考古学的・歴史学的に 少なくとも 5,000 年以上 にわたるとされる。中央アジアの草原で人類と出会い、東アジア・南アジア・地中海・欧州・新大陸へと広がる過程で、繊維・食料・医薬・宗教儀礼 の素材として多様な文化に組み込まれてきた。20 世紀に入ると国際的な禁止体制が整い、21 世紀には合法化の波が広がっている。本記事はその通史を概観する。

概要

  • 起源は中央アジア。新石器時代から栽培の痕跡があるとされる
  • 古代中国・インド・エジプトで医薬・繊維・宗教用途に
  • 19 世紀の西洋医学に導入されるが、20 世紀初頭から禁止に向かう
  • 1961 年単一条約 が現代国際禁止体制の骨格
  • 1996 年カリフォルニア州 Proposition 215 を起点に、医療用合法化の波が拡大
  • 2013 年ウルグアイ、2018 年カナダ、2024 年ドイツが嗜好用合法化に踏み切る

詳細

古代

中国

紀元前 2,700 年頃の伝説的な医書『神農本草経』に、大麻が薬草として記載されているとされる(成立年代には議論あり)。古代中国では麻の繊維利用が広く、考古学的な麻織物の出土例も多い。

インド

『アタルヴァ・ヴェーダ』(紀元前 1,500 年頃)に大麻が「神聖な植物」として記載されているとされる。ヒンドゥー教・シヴァ信仰では現在も儀礼的な用途が残る地域がある。

エジプト

医療パピルス(紀元前 1,500〜1,000 年頃)に大麻と思われる植物の医療使用への言及があると複数の研究者が報告している。

ギリシャ・ローマ

ヘロドトス『歴史』にスキタイ人による蒸気浴の儀礼での大麻使用が記述されている。プリニウス『博物誌』、ディオスコリデス『薬物誌』にも医療使用への言及がある。

中世・近世

イスラーム圏

イブン・スィーナー(アヴィセンナ)の『医学典範』など、中世イスラーム医学で大麻の医療使用が記録されている。「ハシシ」(樹脂状の濃縮物)の文化が中東・北アフリカで発展した。

大航海時代

ヨーロッパの帆船時代、麻はロープ・帆布の主要素材であった。各国は海軍力維持のために麻栽培を奨励した。新大陸への移住に伴い、北米でも産業作物として広まった。

19 世紀 — 西洋医学への導入と転換点

1840 年代、英国の医師 W. B. O’Shaughnessy がインド勤務中に大麻の医療応用を研究し、英国医学界に紹介したと報告されている。19 世紀後半、西洋諸国の薬局方に大麻チンキ(液剤)が掲載され、鎮痛・鎮静などの用途で処方されていた。

しかしながら 19 世紀末から 20 世紀初頭にかけて、合成医薬品の登場、安全性・標準化の課題、そして国際的な麻薬規制運動の高まりにより、西洋医学から徐々に姿を消していった。

20 世紀 — 国際禁止体制の確立

1925 年ジュネーブ国際阿片条約

国際的に大麻が初めて規制対象となった条約。インド・エジプトの主導で、医療・科学目的以外の流通制限が決議されたと記録されている。

1937 年 米国マリファナ税法 (Marijuana Tax Act)

米国で連邦レベルの実質禁止を実現した法律。当時の社会的・人種的背景についての歴史研究が多数行われている。

1961 年 単一条約

複数の旧条約を統合し、現在まで続く国際薬物統制レジームの基礎を築いた。大麻は採択時、附表 I かつ附表 IV(最も厳格)に分類された。詳しくは別記事「1961 年の麻薬に関する単一条約」を参照されたい。

1971 年・1988 年の関連条約

1971 年「向精神薬に関する条約」、1988 年「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する条約」が、単一条約とともに「国際薬物統制 3 条約」を構成している。

1990 年代以降 — 合法化の波

1996 年 米国カリフォルニア州 Proposition 215

米国における初の州レベル医療用大麻合法化。これ以降、米国各州・他国へ医療用合法化の波が広がった。

2003 年 オランダ

医療用大麻供給を国の管理下に置く制度を整備したと報じられている。

2013 年 ウルグアイ

世界初の連邦レベル嗜好用大麻合法化。

2018 年 カナダ

先進国初の連邦レベル嗜好用合法化(Cannabis Act)。

2020 年 大麻のリスケジューリング

WHO 勧告に基づき、CND は大麻と大麻樹脂を単一条約附表 IV から削除する決議を採択したと発表されている(賛成 27・反対 25・棄権 1)。附表 I は維持。

2024 年 ドイツ

改正大麻法 (CanG) で部分合法化を実施した欧州の大規模事例。

現在の論点・最新動向

国際禁止体制と国内合法化のテンション

合法化を行った国の措置と、1961 年単一条約第 4 条「医療・科学目的への限定」義務との関係は、国際法上の論点として継続している。INCB は年次報告書で懸念を繰り返し表明していると報じられている。

医療研究と政策の循環

医療用途への研究進展、安全性・有効性のエビデンス蓄積が、各国の規制議論に影響を与えている。同時に、合法化後の社会的影響(若年層使用率、運転事故、医療現場への影響など)に関する研究が進んでいる。

まとめ

大麻と人類の関わりは、繊維・医薬・宗教・嗜好という多面的な文脈で 5,000 年以上続いてきた。20 世紀の国際禁止体制は、それまでの多様な利用を一元的に規制する転換点であった。1990 年代以降の合法化の波は、その体制への部分的な見直しを意味するが、国際条約の枠組みは依然として骨格を維持している。本記事の情報は 2026 年 5 月時点のものであり、各国の規制動向は今後も変動が続く見通しである。

出典

出典 — Sources

この記事をシェア

Related

この記事を読んだ人はこちらも