HighWide 大麻情報メディア

カンナビノイド」と一括りに語られる物質群には、実は どこで生まれたかが違う 3 つのグループ がある。人体の中で自然に作られるもの(内因性)、大麻草から取れるもの(植物性)、実験室で人工合成されたもの(合成)の 3 種類。本記事はそれぞれの特徴と相互の関係を整理する。

概要

  • 内因性(endogenous / endocannabinoids): 人体・動物が自前で合成する。代表は アナンダミド(AEA)2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)
  • 植物性(phytocannabinoids): 植物由来。Cannabis sativa が代表的だが、限定的に他の植物にも類似化合物がある
  • 合成(synthetic): 化学合成により作られた化合物群。医薬品・研究用試薬・違法流通製品まで多様

詳細

内因性カンナビノイド

人体は、必要なときに脂肪酸誘導体として アナンダミド(AEA)2-AG を合成し、CB1/CB2 受容体を介してシグナル伝達を行うと報告されている。これらは「合成と分解のバランス」で機能を調整する短命なシグナル分子である(詳しくは別記事「エンドカンナビノイド・システム」を参照)。

  • AEA: 1992 年同定。神経・末梢に分布
  • 2-AG: 1995 年同定。AEA より高濃度で存在
  • 分解酵素 FAAH(AEA を分解)MAGL(2-AG を分解) によって生体内濃度が制御される

植物性カンナビノイド

Cannabis sativa L. には 100 種類以上のカンナビノイドが同定されているとされる。代表的なものは Δ9-THC、CBD、CBN、CBG、CBC、THCV など(詳細は「主要カンナビノイド入門」記事を参照)。

植物性カンナビノイドの薬理学的特徴:

  • 構造: 多くがテルペンフェノール系の化合物
  • 酸性型と中性型: 植物中では多くが酸性型(THCA、CBDA など)で存在し、加熱で活性型に変わる
  • 受容体相互作用: Δ9-THC は CB1 の部分作動薬。CBD は受容体への直接結合は弱く、複雑な作用機序を持つとされる

カンナビノイド類似化合物は、エキナセアやコパイバ、カバなど他の植物にも限定的に見つかっているとする報告があるが、Cannabis sativa が最も多様なカンナビノイド供給源である。

合成カンナビノイド

合成カンナビノイドはさらにいくつかのカテゴリに分かれる。

1. 医薬品として合成された化合物

  • ドロナビノール (Marinol、Δ9-THC の合成版): 化学療法に伴う悪心・嘔吐や AIDS 関連体重減少への適応で、米国 FDA が承認していると報告されている
  • ナビロン (Cesamet): THC 類似の合成化合物。同様の適応で承認されている国がある

なお エピディオレックス (Epidiolex) は植物由来 CBD の高度精製製剤であり、合成カンナビノイドではない。臨床用途では他の医薬品と同様に標準化された製剤として扱われる(植物性カテゴリの代表的医薬品例)。

2. 研究用試薬

  • HU-210、CP 55,940、WIN 55,212-2 など: 受容体研究のために設計された合成化合物。市販されておらず、研究機関のみが扱う

3. 違法流通の合成カンナビノイド

  • JWH-018、AM-2201、5F-AB-PINACA など: 「スパイス」「K2」「ハーブ系」などの名称で違法流通している製品群
  • これらは CB1 受容体への 完全作動薬 として強力に作用するものが多く、植物性 Δ9-THC(部分作動薬)より重篤な有害事象が報告されている
  • 急性中毒、痙攣、心血管系イベント、死亡例も報告されているとされる

日本では 2010 年代以降、これらの違法系合成カンナビノイドが指定薬物として順次規制されている。

現在の論点・最新動向

半合成カンナビノイド(セミシンセティック)の規制

近年、ヘンプ由来 CBD を化学変換して作られる Δ8-THC、HHC、HHC-O、THC-O などが「合法ヘンプ由来」をうたって流通する例が増えている。これらは植物性と合成の境界に位置し、各国で規制対応が進んでいる。日本では指定薬物制度のもと、順次規制対象に追加されているとされる。

受容体作動性の違いと安全性

植物性 Δ9-THC は CB1 の 部分作動薬 であり、過剰摂取しても受容体反応は飽和する。一方、違法流通の合成カンナビノイドは多くが 完全作動薬 で、用量応答がより激しい。これが急性有害事象の重症度の違いに関わるとする研究が報告されている。

医薬品開発の方向性

内因性カンナビノイド系を標的とした FAAH 阻害薬・MAGL 阻害薬や、CB2 選択的作動薬など、副作用を抑えた治療薬の開発が進められている。一方で、2016 年フランスでの FAAH 阻害薬臨床試験における重篤有害事象(BIA 10-2474 試験)など、開発の難しさも明らかになっている。

まとめ

カンナビノイドには「内因性・植物性・合成」という 3 つの起源があり、それぞれ薬理特性と規制が異なる。特に違法流通の合成カンナビノイドは、植物性 Δ9-THC とは作用強度が異なり、より重篤な有害事象が報告されている点に注意が必要である。日本においては大麻草・大麻製品の所持・使用・栽培・輸出入が大麻取締法および関連法令で規制され、違法系合成カンナビノイドや一部の半合成カンナビノイドは指定薬物制度で別途規制されている。

出典

出典 — Sources

この記事をシェア

Related

この記事を読んだ人はこちらも