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Vipers — ジャズ・エイジの大麻文化と1937年の終幕
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1920〜30 年代の米国のジャズシーンには、大麻と分かちがたく結びついた一時代があった。当時、大麻を吸う人は俗語で 「viper(ヴァイパー)」 と呼ばれ、その文化はハーレムのクラブから多くの楽曲のタイトルや歌詞にまで広がっていた。本記事は、この 「ヴァイパーの時代」 がどのようなもので、なぜ 1937 年を境に表舞台から消えたのかを、史実に沿って振り返る。なお本記事は文化史の解説であり、大麻の使用を推奨・美化するものではない。
1920〜30 年代のジャズ界隈の俗語で、大麻を吸う者を「viper(ヴァイパー=毒蛇)」 と呼んだ。語源には諸説あり(吸い込むときの「シューッ」という音から、という説などがあるが確証はない)。大麻そのものは 「gage(ゲージ)」「tea」「muggles」「reefer」 など複数の隠語で呼ばれた。
当時の 米国 では、酒類が禁止されていた 禁酒法時代(1920〜1933 年) の一方で、大麻はまだ連邦法で違法化されておらず、ニューヨークなどの都市には大麻を吸わせる非公式の店(「tea pad」)が多数あったとされる。ハーレムのクラブは、ミュージシャンが集い演奏し、大麻が交わされる場の一つだった。
この時代、大麻を題材にした「ヴァイパー・ソング」が数多く録音された。よく知られた例:
また、白人クラリネット奏者の メズ・メズロウ は、ハーレムで良質な大麻の供給者として知られ、彼の名「mezz」は良質な一本を指す隠語にまでなった。彼の回想録『Really the Blues』(1946 年)は、この時代の空気を伝える資料として読まれている。
この比較的開かれた大麻文化は長くは続かなかった。1930 年に連邦麻薬局(FBN)の初代長官に就いたハリー・アンスリンガー は、大麻を危険視するキャンペーンを展開した。その言説には、黒人やラテン系の移民コミュニティ、そしてジャズ・ミュージシャンを名指しで標的にする、あからさまに人種主義的な要素 が含まれていたことが、歴史研究で広く指摘されている。
同時期には、大麻の恐怖を誇張した映画「リーファー・マッドネス」(1936 年)のようなプロパガンダ的作品も登場した。こうした流れは、1937 年のマリファナ課税法(Marihuana Tax Act) の成立に結実し、米国で大麻が事実上違法化された(別記事「1937年マリファナ課税法」)。
1937 年の課税法以降、大麻を公然と歌い、語る「ヴァイパー」の文化は表舞台から退いた。大麻への言及は隠語の中に潜り、あるいは沈黙した。アンスリンガーはその後もジャズ・ミュージシャンを取り締まりの対象として注視し続けたと伝えられる。開かれた大麻文化の短い時代は、こうして人種主義的な禁止運動とともに幕を閉じた。
ヴァイパー文化の史実が重要なのは、現在まで続く「大麻=危険」というイメージが、科学的評価よりも先に、1930 年代の人種主義的なプロパガンダによって作られた という経緯を示す点にある。後年、ボブ・マーリーとレゲエ(別記事「ボブ・マーリーと大麻文化」)など、音楽と大麻の結びつきは別の文脈で再び語られることになるが、その原型の一つがジャズ・エイジにあった。
本記事は 歴史・文化の記録としての解説 であり、当時の大麻使用を称賛・推奨するものではない。同時に、この時代の禁止運動が 人種差別と結びついていた という負の側面も併せて記録することが、史実を一面的にしないために重要である。
本記事は米国の文化史の解説を目的としたもの。日本では大麻草・大麻製品の所持・使用・栽培・輸出入は 大麻取締法および関連法令 により規制されており、本記事は特定の使用を推奨するものではない。
禁酒法時代と重なる 1920〜30 年代の米国では、大麻がまだ連邦法で違法化される前の、比較的開かれた大麻文化がジャズシーンに存在した。大麻を吸う者は「viper」と呼ばれ、アームストロング「Muggles」、キャロウェイ「Reefer Man」、ウォーラー「Viper’s Drag」など多くの楽曲に刻まれた。しかしこの文化は、ハリー・アンスリンガーらによる人種主義的な禁止運動と 1937 年マリファナ課税法によって表舞台から姿を消した。現在の大麻イメージの源流の一端を示す史実として、また禁止が差別と結びついた歴史の記録として、振り返る価値がある。
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