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品種図鑑 産業用ヘンプ Type III (CBD 優位)

FINOLA — 自動開花のはじまりになったフィンランドの食用ヘンプ

文責 ·

品種データシート

系統
産業用ヘンプ
化学型
Type III (CBD 優位)
THC
<0.3%
由来
フィンランド。クオピオ大学の JC Callaway と Palkkila 農場の Tero Laakkonen による育成
成立年
1995
親系統
北ロシア由来の在来系統(ヴァヴィロフ研究所)
風味
ナッツ青草

FINOLA(フィノラ)は、食用の種子を採るためにフィンランドで育成された 低 THC の産業用ヘンプ品種である。育成者コード FIN-314 として 1995 年に記載され、1990 年代後半に品種登録された。

酔うための品種ではない。それでもこの品種が大麻の歴史に名を残しているのは、記録に残る最初の「自動開花(オートフラワー)」品種とされているからだ。

ひとことで言うと

食用ヘンプとして作られた品種が、嗜好用品種の育種を変えた。いまオートフラワーと呼ばれる系統群の出発点にあたる。

概要

育成したのは、フィンランドの クオピオ大学JC Callaway と、Palkkila 農場Tero Laakkonen

親に使われたのは、ヴァヴィロフ研究所(ロシア)が保存していた 北ロシア由来の 2 つの在来系統である。これらを自然受粉で増殖させ、そこから選抜した。育成者は、親系統が ルデラリス(Cannabis ruderalis) 系だった可能性を指摘している。

ヴァヴィロフ研究所は世界最古級のジーンバンク(遺伝資源保存機関)で、世界各地の作物系統を保存してきた機関である。北ロシアという、夏が短く緯度の高い環境で育ってきた系統——この出自が、FINOLA の性質を決めることになる。

承認の経緯

  • 1995 年 — 育成者コード FIN-314 として記載
  • 1990 年代後半FINOLA として品種登録
  • 1998 年カナダが承認
  • 2003 年EU が承認
  • 2005 年以降カナダで最も多く栽培されるヘンプ品種になったとされる

形態と特徴

  • 草丈: 成熟時で 約 1.5 m。産業用ヘンプとしては非常に低い(繊維用品種は 2〜4 m に達する)
  • 雌雄: 雌雄異株(dioecious)
  • 開花: 日長に関係なく開花する——いわゆる 自動開花(オートフラワー)
  • 早生: 生育期間が短く、高緯度の短い夏でも種子を実らせる
  • 収穫: 背が低いため、穀物用のコンバインをそのまま使って収穫できる

なぜ「日長に関係なく開花する」のか

通常の大麻は 短日植物である。日照時間が一定より短くなったことを感知して開花に切り替わる。だから緯度の高い地域では、日が短くなる頃には気温が下がりすぎていて、種子が実る前に季節が終わってしまう。

北ロシアのような環境で生き延びてきた系統は、この制約を回避する方向に適応した。日長ではなく、一定の日数が経過したら開花する——という性質である。FINOLA はこれを受け継いでいる。

化学組成

  • Δ9-THC: 0.3% 未満。産業用ヘンプとしての基準を満たすよう選抜されている
  • CBD 含有量については、公開資料で一貫した数値を確認できなかったため、本記事では数値を示さない

化学型は Type III(CBD 優位・THC 低含有) に分類される。精神作用を目的とした利用を想定した品種ではない。

主要テルペンについても、この品種に固有の分析値として信頼できる公開データを確認できなかった。種子生産を目的とした品種であり、香気成分が育種の指標になってこなかったことが背景にあると考えられる。

用途

FINOLA は オイルシード(油糧種子)用のヘンプ品種としては最初の例とされる。繊維ではなく、種子そのものを採るために作られた。

ヘンプの種子は、必須脂肪酸やタンパク質を含む食材として利用されてきた(詳しくは「食品としてのヘンプシード」を参照)。産業用ヘンプ全体の位置づけは「産業用ヘンプとは」で扱っている。

効果プロファイル

**該当しない。**Δ9-THC が 0.3% 未満であり、嗜好目的の使用を想定した品種ではない。本サイトの他の品種記事にある「効果プロファイル」は、この品種には当てはまらない。

派生・影響

ここがこの品種の歴史的な意味である。

  • FINOLA は、他の油糧種子用ヘンプ品種の育成に広く使われた
  • そして オートフラワー系統の長い系譜の出発点になったとされる

現在、嗜好用の市場には「オートフラワー」と銘打った品種が数多くある。日長を管理しなくても開花するため、屋外の短い季節でも育てられ、屋内でも光の管理が簡単になる——という利点で普及した。

その性質のもとをたどると、北ロシアの短い夏に適応した系統と、それをフィンランドで食用に育てた人たちに行き着く。嗜好用の都合で作られた性質ではなかった、という点がこの品種の面白さだ。

ランドレース(在来系統)が現代の品種に与えた影響については、「ランドレースとは何か」も参照。

文化的意義

  • 産業用の育種が、嗜好用の育種に影響を与えた数少ない例。通常はその逆か、両者が交わらないことのほうが多い
  • ジーンバンクの価値を示す事例でもある。ヴァヴィロフ研究所に保存されていた北ロシアの系統がなければ、この品種は生まれていない。保存されているだけで使われていなかった遺伝資源が、後に育種の材料になった
  • 日本の とちぎしろ と同様、低 THC に選抜された産業用品種である。ただし目的は異なり、とちぎしろが繊維と神事用の麻を担ってきたのに対し、FINOLA は 食用の種子のために作られた

日本国内における規制

日本国内では、大麻草の 栽培は「大麻草の栽培の規制に関する法律」により免許制で厳格に規制されている。2024 年の法改正により、繊維や種子の採取を目的とする 産業用ヘンプの栽培についても、免許と管理の枠組みが定められた。無免許の栽培は処罰の対象である。

また、大麻草由来の製品についても THC の残留限度値が定められており、これを超えるものは規制対象となる。ヘンプとマリファナの制度上の区別については「ヘンプとマリファナ」を参照。

本記事は品種の植物学的・歴史的な解説を目的としており、栽培を勧めるものではない。

出典 — Sources

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