HighWide 大麻情報メディア

「カンナビノイド」と一括りにされる物質群は、実はさまざまな起源を持つ。本記事は 大麻草に自然に含まれる成分(植物由来)、ヘンプ由来 CBD などから化学変換された成分(半合成)、実験室で完全に人工合成された成分(合成)の 3 大別で整理した網羅カタログ。各成分名から個別解説記事へリンクしている。

概要

カンナビノイドの大分類:

  • 植物由来 (フィトカンナビノイド) — Cannabis sativa L. に自然に含まれる。100 種以上同定されているとされる
  • 半合成 (セミシンセティック) — ヘンプ由来 CBD などを化学変換して作る。Δ8-THC や HHC が代表(2010 年代以降に流通拡大)
  • 合成 (シンセティック) — 実験室で完全合成。医薬品 (ドロナビノール等)・研究用試薬・違法流通品まで(2026 年時点の規制状況は国・物質により異なる)

各起源で 薬理特性・規制状況・流通実態が大きく異なる ため、起源別に把握することが理解の出発点となる。詳しくは別記事「内因性・植物性・合成カンナビノイドの違い」を参照。


植物由来カンナビノイド (フィトカンナビノイド)

Cannabis sativa L. には現在 100 種類以上のカンナビノイドが同定されているとされる。本セクションでは主要な成分と、研究文脈で頻繁に登場するマイナー成分を取り上げる。

量的に主要な成分

成分別名精神作用個別記事
Δ9-THCデルタ 9 テトラヒドロカンナビノールあり (CB1 部分作動薬)THC とは
CBDカンナビジオールほぼなしCBD とは

Δ9-THC と CBD は、大麻草が生合成する量と研究の蓄積において突出した 2 大成分。多くの大麻品種でこの 2 成分が乾燥重量の数 % から 30% 程度を占める。

主要なマイナーカンナビノイド (研究対象として注目)

成分別名特徴個別記事
CBNカンナビノールTHC の酸化分解物。鎮静作用研究CBN とは
CBGカンナビゲロール「カンナビノイドの母」。すべての前駆体CBG とは
CBCカンナビクロメン非精神作用。抗炎症・抗うつ研究CBC とは
THCVテトラヒドロカンナビバリン食欲調節・代謝研究THCV とは
CBDVカンナビジバリン抗てんかん研究の対象 (個別記事は後日追加予定)

酸性型 (Acidic forms)

植物中では多くが酸性型 (末尾 A) として存在し、加熱・脱炭酸で活性型に変わる。

酸性型加熱後詳細
THCAΔ9-THC酸性型と活性型の違い
CBDACBD同上
CBGACBG (各カンナビノイドの前駆体)同上
CBNACBN同上

THCA・CBDA はそれぞれ独自の薬理学的研究が報告されているが、いずれも植物中の存在形態として捉えるのが標準的。

その他の微量成分 (順次解説記事を追加予定)

  • THCB (テトラヒドロカンナビフォロール)
  • CBL (カンナビサイクロール) — CBC の光分解物
  • CBT (カンナビトリオール)
  • CBE (カンナビエルソイン)
  • THCP — 2019 年同定の天然型。CB1 への結合親和性が Δ9-THC より高いと報告
  • CBDP — THCP と同時に同定された CBD 類似体

半合成カンナビノイド (セミシンセティック)

ヘンプ由来 CBD などを 化学的に変換 して作られるカンナビノイド群。米国 2018 年 Farm Bill のヘンプ規制緩和以降、「合法ヘンプ由来」をうたって北米・欧州で流通が拡大し、各国の規制が後追いしている領域。

成分由来日本での規制個別記事
Δ8-THC (デルタ 8)CBD 異性化麻向法の麻薬 (2024 年改正で明確化)Δ8-THC とは
Δ10-THC (デルタ 10)CBD 異性化麻向法上の麻薬扱い (個別記事は後日追加予定)
HHC (ヘキサヒドロカンナビノール)THC 水素化指定薬物 (2022 年 3 月 17 日施行)HHC とは
HHC-O アセテートHHC アセチル化指定薬物 (2023 年 6 月施行)、個別記事は後日
THC-O アセテートΔ9-THC アセチル化指定薬物 (2023 年 6 月施行)、個別記事は後日
Δ8-THC-O アセテートΔ8-THC アセチル化指定薬物 (2023 年 6 月施行)、個別記事は後日
HHC-PHHC のペンチル鎖延長型指定薬物、個別記事は後日
THC-PTHC のペンチル鎖延長型指定薬物、個別記事は後日

詳しくは別記事「指定薬物制度と HHC など類似成分」を参照。


合成カンナビノイド (シンセティック)

実験室で完全に化学合成された化合物群。2026 年時点で 医薬品 として承認されたもの、研究用試薬、そして 2010 年代以降の 違法流通の危険ドラッグ の 3 系統に大別される。

医薬品として承認された合成カンナビノイド

成分 (商品名)適応承認国 (主要)個別記事
ドロナビノール (Marinol)化学療法に伴う悪心・嘔吐、AIDS 関連の食欲不振米国 FDA (1985)、他個別記事は後日追加予定
ナビロン (Cesamet)化学療法に伴う悪心・嘔吐カナダ・米国・英国 等個別記事は後日追加予定

これらは Δ9-THC または THC 類似体を化学合成した単一成分の医薬品。植物由来の ナビキシモルス (Sativex) は植物抽出物なので合成ではないが、医療用カンナビノイド医薬品として並んで参照されることが多い (詳しくは別記事「Sativex と MS 痙縮研究」)。

研究用試薬

CB1/CB2 受容体の薬理学的研究のために設計された合成化合物。市販されておらず研究機関のみが扱う。

成分用途個別記事
HU-210CB1 強力作動薬の標準物質後日追加予定
CP 55,940CB1/CB2 標準作動薬後日追加予定
WIN 55,212-2CB1/CB2 作動薬後日追加予定

これらは Cannabis sativa とは化学構造が大きく異なるが、CB 受容体への作用を持つため「合成カンナビノイド」と総称される。

違法流通の合成カンナビノイド (危険ドラッグ、2010 年代以降に世界各国で問題化)

スパイス」「K2」「ハーブ系」などの名称で 2010 年代から世界各国で違法流通した製品群。CB1 受容体への 完全作動薬 が多く、植物性 Δ9-THC (部分作動薬) より重篤な有害事象 (痙攣・心血管イベント・死亡例) が報告されている。日本では指定薬物制度のもと順次規制対象に追加された。

代表例 (いずれも日本で指定薬物指定済み):

  • JWH シリーズ — JWH-018、JWH-073、JWH-122 など (Clemson 大学 John W. Huffman 研究室で開発された化合物群が違法流用された)
  • AM シリーズ — AM-2201、AM-694 など
  • PINACA / FUBINACA シリーズ — 5F-AB-PINACA、ADB-FUBINACA など
  • CP シリーズ — 違法版 CP 47,497 等
  • MDMB-CHMICA / MDMB-FUBINACA — 2010 年代後半に欧州で重篤事例多発

これらは現在も新しい構造の派生物が市場に投入され続けており、各国の指定薬物制度・規制物質法での 包括指定 が対策として用いられている。


内因性カンナビノイド (エンドカンナビノイド)

参考として補足するが、本カタログの主対象 (大麻成分・合成成分) とは別カテゴリ。人体・動物が自分で合成する カンナビノイド類似物質。

成分同定年説明
アナンダミド (AEA)1992 年最初に同定された内因性カンナビノイド
2-アラキドノイルグリセロール (2-AG)1995 年AEA より高濃度で存在

詳しくは別記事「エンドカンナビノイド・システム」を参照。


規制状況の概観 (2026 年 5 月時点)

国内の規制概観 (日本):

  • Δ9-THC・THCA・大麻草由来製品全般 — 大麻取締法 + 麻薬及び向精神薬取締法 (2024 年 12 月改正法)
  • Δ9-THC 残留限度値 — 油脂・粉末 10 ppm / 水溶液 0.10 ppm / その他 1 ppm を超えると麻薬扱い
  • CBD — 残留限度値以下なら流通可能 (2024 年改正で部位基準から残留量基準に移行)
  • CBN2026 年 6 月 1 日施行で指定薬物
  • Δ8-THC 本体 — 麻薬及び向精神薬取締法上の 麻薬
  • HHC / HHC-O / THC-O / HHC-P / THC-P 等 — 指定薬物
  • JWH 系・PINACA 系等の違法系合成 — 指定薬物 + 包括指定

国際機関の評価:

  • WHO ECDD — CBD は乱用ポテンシャル・依存性ともに低いと評価。Δ9-THC・大麻樹脂は 2020 年に 1961 年単一条約附表 IV から削除 (附表 I は維持)
  • UNODC / INCB — 嗜好用合法化国に対し継続的に懸念を表明している立場

各国の規制は時点・対象成分により大きく異なるため、海外渡航時・輸入時には各国の最新法令の確認が必要となる。


関連記事

本記事は文化的・植物学的・医療文脈の解説を目的としており、特定の使用や製品購入を推奨するものではない。日本国内では大麻草・大麻製品の所持・使用・栽培・輸出入は大麻取締法および関連法令により規制されている。医療上の判断は必ず医師等の専門家に相談する必要がある。

出典

出典 — Sources

この記事がよかったら

この記事をシェア

Related

この記事を読んだ人はこちらも