HighWide 大麻情報メディア

品種図鑑 — ハイブリッド — Type I (THC 優位)

Triangle Kush — エアコンが運んだ花粉から生まれた、Wedding Cake の親

文責 ·

品種データシート

系統
ハイブリッド
化学型
Type I (THC 優位)
THC
20-26%
CBD
<1%
由来
米国フロリダ州。1990 年代初頭、Marty "TK" Calabrese のもとで偶発的に成立したとされる
親系統
Hindu Kush × Emerald Triangle
主要テルペン
#caryophyllene#limonene#myrcene
風味
レモンの皮燃料松土
効果傾向
リラックス多幸感頭の明瞭さ身体の重さ

Triangle Kush(トライアングル・クッシュ)は、1990 年代初頭の米国フロリダ州で成立したとされる クローン限定のインディカ寄りハイブリッドである。頭文字から TK とも呼ばれる。

この品種は、自分の名前ではあまり知られていない。それでも当サイトの品種記事には、すでに何度も名前が出てきている。Wedding Cake の親であり、Gushers の親であり、Ice Cream Cake の祖父にあたるからだ。

ひとことで言うと

店頭で見かけることは少ないのに、棚に並ぶ多くの品種の系譜に入っている株。SeedFinder には 317 の直接の子孫が登録されている。2010 年代後半以降の「デザート系」の流行は、かなりの部分がこの一本の枝から伸びている。

そして成立の経緯は、育種と呼べるのかどうか微妙である。

生まれ方

広く語られている経緯は、おおよそ次のようなものだ。

1990 年代初頭、フロリダ州南部。オランダから持ち帰られた Hindu Kush の種子が発芽させられ、そのうち 雌と判別されていた一株が、後になって花粉を出した(いわゆる両性化)。その株は栽培室の 空調の吸気口の近くにあり、花粉は空気の流れに乗って部屋じゅうに配られてしまう。

部屋を埋めていたのは Emerald Triangle と呼ばれる系統の雌株だった。こうして意図しない交配が起き、種の入った収穫が生まれる。そこから選抜されたものが Triangle Kush である、とされる。

作出者として名前が挙がるのは Marty “TK” Calabrese(現在は Origins TK Selects の創設者)で、本人も自分の関与を 「まったくの偶然で(by mere chance)」 と表現している。

つまり、設計された交配ではなく、事故の産物という位置づけになる。

名前の由来には説が二つある

「Triangle(三角形)」が何を指すのかについては、二つの説が流通している。

説内容
フロリダ三都市説ジャクソンビル・マイアミ・タンパ——当時のフロリダの大麻生産の中心地を地図上で結ぶと三角形になることから
親株説交配相手である Emerald Triangle の名前をそのまま引き継いだ

どちらか一方が正しいと断定できる資料は見つからなかった。Emerald Triangle はもともと カリフォルニア州北部(フンボルト・メンドシーノ・トリニティの 3 郡)の大麻産地を指す呼び名でもあるため、話の中でフロリダの三角形とカリフォルニアの三角形が混線している可能性がある。

OG Kush との関係は、資料によって食い違う

ここは注意が必要な点である。Triangle Kush と OG Kush の関係について、流通している説明は一致していない。

  • 説 A(育種家側の説明) — 両者は きょうだい。同じ 1990 年代初頭フロリダの一連の出来事から、OG Kush と Triangle Kush の両方が出てきた。Calabrese 自身が「OG Kush と Triangle Kush の種子を偶然に作った」と語っている
  • 説 B(小売・データベース側に多い説明) — Triangle Kush は OG Kush のフロリダ産の表現型の子孫。つまり OG Kush のほうが先

当サイトの既存記事では簡便に「Triangle Kush(OG Kush 系)」と表記してきたが、厳密にはどちらが先かは確定していない。両者が 同じ時期・同じ土地・同じ Hindu Kush 由来の素材から出ていることまでは、複数の資料で共通している。

クローン限定株の来歴は、書面ではなく栽培者間の口伝で受け渡されてきた。年代が古いほど検証は難しくなる。

形態と特徴

  • 系統バランス: インディカ寄り。85:15 と紹介されることが多いが、この比率は販売情報に由来するもので、遺伝学的な測定値ではない
  • 開花期間: おおむね 8〜9 週(約 70 日)
  • 香り: レモンの皮 × 燃料 × 松 × 土。OG 系に特徴的な、柑橘と燃料が同居する香りの典型例とされる
  • 増やし方: 本来は クローン(挿し木)でのみ受け継がれてきた株。原株のカットは限られた栽培者の間で保持されてきたとされ、近年は種子として売られるものもあるが、それらは原株そのものではない

化学組成

カンナビノイド

  • Δ9-THC: おおむね 20〜26%
  • CBD: 1% 未満

化学型は Type I(THC 優位) に分類される。これらの数値は市販品の検査結果や品種データベースの集計に基づくもので、測定条件は統一されていない。栽培条件やカットによって変わる。

主要テルペン

テルペンは植物が持つ香り成分で、品種ごとの香りの個性をつくる。Triangle Kush で報告される主なものは次のとおり:

  • β-カリオフィレン(caryophyllene): 胡椒のようなスパイス感
  • D-リモネン(limonene): レモンの皮を思わせる明るさ
  • β-ミルセン(myrcene): 土やハーブを思わせる含み

小売サイトにはテルペンの具体的な含有率(「カリオフィレン 0.8〜1.2%」など)を掲げるものもあるが、検査機関も測定方法も示されていないため、本記事では採用しない。テルペンと受容体の関係は「テルペンとカンナビノイド受容体活性化(前臨床研究)」も参照。

効果プロファイル(報告されている傾向)

インディカ寄りの品種として、以下の傾向が報告されている:

  • 落ち着きと 多幸感が挙げられることが多い
  • OG 系のなかでは 頭が比較的はっきりしているという報告があり、そこから「日中でも使える」と語られることがある
  • 使用量が増えると 身体の重さが前に出る方向へ移行するという報告

医療文脈でユーザーレポートとして言及される症状:

  • 痛み
  • ストレス
  • 食欲の低下

これらは Δ9-THC の薬理作用と、テルペン構成の組み合わせとされる。大規模臨床試験で確立された治療効能はない。

副作用(報告されているもの)

  • 口渇・眼の乾燥
  • めまい
  • 高 THC 品種であるため、多量摂取時の不安感が出ることがある

派生・関連品種

Triangle Kush の重要性は、自分がどう評価されたかよりも 何を作る材料になったかにある。

  • Wedding Cake(Triangle Kush × Animal Mints)——Seed Junky Genetics。ここから Ice Cream Cake が出る
  • Gushers(Triangle Kush × Gelato #41)——別名 TK41。この略称の「TK」が Triangle Kush である
  • SeedFinder に登録されている 直接の子孫は 317。孫世代まで数えれば、さらに広がる

つまり、2010 年代後半以降の「菓子の名前を持つ品種」の多くが、この株を経由している。

文化的意義

  • 偶然の産物が定番になった例。両性化した一株と空調の気流という、栽培室では起きてほしくない事故から生まれている
  • 記録が残らない時代の株でもある。屋外栽培への取り締まりが強まった時期のフロリダで、栽培は屋内へ移り、株は閉じた栽培者のネットワークのなかで手渡しで受け継がれた。文書がないため、来歴は証言に依存する
  • 名前の知名度と系譜上の重要度が一致しない典型。店頭で Triangle Kush を選ぶ人は多くないが、棚に並ぶ品種の親をたどると頻繁に行き当たる。品種名と遺伝的な実態のずれについては、別記事「大麻の苗1本に2万ドル」でも扱った

日本国内における規制

日本国内では大麻草・大麻製品の 所持・使用・栽培・輸出入は大麻取締法および関連法令(現・大麻草の栽培の規制に関する法律、麻薬及び向精神薬取締法)により規制 されている。Triangle Kush は嗜好用・医療用が合法な地域で流通する品種であり、本記事は文化的・植物学的な解説を目的としている。日本では所持・使用は違法であり、本記事は特定の使用を推奨するものではない。

出典 — Sources

この記事がよかったら

コメント
    0 / 600

    リンクや売買・勧誘とみなされる投稿、他者を傷つける表現はご遠慮ください。投稿は公開されます(不適切なものは削除される場合があります)。

    この記事をシェア