ニュース — 市場・産業 — 米国
米国のヘンプ由来THC飲料、小売拡大と11月に迫る連邦規制
· 更新
ニュース — 市場・産業 — 米国
· 更新
米国で、ヘンプ(産業用大麻)由来の THC 飲料が、大手小売チェーンの棚にまで広がっている。大手量販店 Target は、これまでのミネソタ州での試験販売に加え、イリノイ・フロリダ・テキサスの 3 州・300 店超で販売を始めたと報じられた。一方、こうした「酔う」ヘンプ製品を 2026 年 11 月から連邦レベルで規制する法律がすでに成立しており、業界は対応に追われている。本記事は、米国市場で何が起きているか、その背景にある法律、そして日本での位置づけを中立に整理する。
ここで言う「THC 飲料」とは、大麻草の主成分で精神作用(酔い)をもたらす THC(テトラヒドロカンナビノール) を、1 本あたり数 mg 単位で配合した炭酸飲料などを指す。多くは 1 本 2〜10mg 程度の低用量で、効き目をコントロールしやすい点や、アルコールの代替として位置づけられている点が広がりの背景にあるとされる。
カギは 2018 年農業法(2018 Farm Bill) にある。同法は 乾燥重量で THC 0.3% 以下の大麻を「ヘンプ(hemp、産業用大麻)」として連邦レベルで合法化した(別記事「米 2018 年農業法とデルタ 8」)。
問題は、「濃度 0.3% 以下」という基準が重量割合で定められている点である。飲料のように水分が大半を占める製品では、1 本あたりの THC 量を数 mg 確保しても、全体に占める重量割合は 0.3% を下回る。この結果、**「法律上はヘンプ、しかし飲めば酔う」**飲料が、大麻専門の販売店(ディスペンサリー)を介さず、スーパーや酒販店でも流通できる状態が生まれた。
この「酔うヘンプ」をめぐり、連邦議会は規制強化に動いた。
つまり、現在の小売拡大は、規制発効を前にした過渡期に起きている動きでもある。
この動きに対し、酒類小売・流通業界が独自に動いている。
これは、「酔う製品」を酒類と同様の管理下に置くべきだという、業界側からの規制提案である。
ヘンプ由来 THC 飲料の市場規模については、業界推計で 約 11 億ドルとする報道がある(2026 年 2 月時点、The Silicon Review)。ただし市場規模やその予測は調査会社によって数値が大きく異なり、確立した公的統計があるわけではない。本記事ではこれらを幅のある業界推計として扱う。
これらは、近年大麻の合法化が進む国・地域に共通する「製品の市場化が、それを管理する規制より先に進む」という構図の一例とも言える。
ここまでは米国市場の話である。日本国内では、THC は大麻取締法および関連法令(2024 年改正)・麻薬及び向精神薬取締法の規制対象であり、「ヘンプ由来だから合法」という米国の前提はそのまま当てはまらない。本記事で扱ったような THC を含む飲料は、日本では合法的に製造・販売・輸入されない。
また日本では、CBD 製品に関しても残留 THC の基準が設けられ、CBN(カンナビノール)が 2026 年に指定薬物として規制対象となるなど、規制はむしろ強化方向にある(別記事「日本の CBN 指定薬物規制」)。海外渡航先で合法に流通する製品であっても、日本国内への持ち込みは規制に抵触しうるため注意が必要である。本記事は海外市場・政策の解説を目的とし、特定の製品の使用を推奨するものではない。
出典 — Sources
この記事がよかったら
この記事をシェア
Related
ニュース · 市場・産業·米国
2018 年米農業改善法 (Farm Bill) は産業用ヘンプを連邦薬物リストから外し、Δ8-THC 等の『ループホール』市場を生んだ。2025 年 11 月成立の歳出関連法で陶酔性ヘンプ製品の禁止が法定され (2026 年 11 月施行予定)、議論は実装段階へ移行した。
いいね
ニュース · 法制度·日本
厚生労働省は2026年6月1日、大麻由来成分CBN(カンナビノール)を薬機法の指定薬物に指定。製造・輸入・販売・所持・使用が原則禁止となり、罰則も科される。医療用途の例外と手持ち製品の扱いを含め、規制の中身を整理する。
いいね
ニュース · 市場・産業·米国
米コネチカット大とパデュー大の研究チームが、ヘンプ由来CBDからつくる新しい熱可塑性プラスチック「pCBDC」を発表。元の16倍に伸び、沸騰水に耐え、PET代替を狙える性能を示した。ただしCBDの供給量とコストが実用化の壁となる。
いいね
ニュース · 市場・産業·オランダ
オランダ・ワーヘニンゲン大が、絶滅した大麻の祖先酵素を計算で「復元」。古代の酵素は THC・CBD・CBC を作り分けない万能型だったと判明し、酵母によるカンナビノイド生産への応用も期待される。
いいね