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大麻の品種名は、中身をどこまで保証しているのか。医療大麻の業界紙 Business of Cannabis(2026 年 10 月 27 日)が、カナダの研究者とジャージー島の育種会社の CEO に話を聞いた。2 人の答えは「名前はほとんど当てにならない」というものだった。

例として挙がったのが、カナダの定番品種 ピンククッシュ(Pink Kush)である。2018 年にカナダで大麻が合法化されたあと、少なくとも 5 社 がこの名前の商品を出した。しかし研究者の評価では、どれにも本来の香りがなかったという。

ざっくり言うと

  • 大麻の品種名は、もともと非正規の市場で生まれた「呼び名」で、遺伝子や成分を確かめる仕組みがない
  • 育種家によると、ほとんどの品種は 50〜100 の元の系統にさかのぼり、見分けられないほど似ているものも多い
  • DNA を調べた過去の研究でも、同じ名前の大麻の中身がばらつく例が見つかっている

何が語られたか

「ピンククッシュ」を名乗る5社

話をしたのは、カナダの ブリティッシュコロンビア大学(UBC) で大麻の遺伝学を研究する デイビス・アレン氏。2019 年にカナダ保健省の許可を受けた生産会社を共同で立ち上げ、5 年間栽培を担当した経験がある。

アレン氏によると、ピンククッシュはブリティッシュコロンビア州で、ピンク色のめしべとバラのような香りで知られてきた。2018 年にカナダで嗜好用大麻が合法化されると、許可を受けた生産会社は、違法市場や医療市場で使われていた品種名をそのまま商品名に使った。少なくとも 5 社がピンククッシュを出したが、アレン氏の評価では、どれにもあの特徴的な香りはなかったという。

アレン氏は「国際的な大麻の遺伝資源の市場は、ほとんど詐欺に近いように見える」(筆者訳)と話す。ただし、ほとんどの業者はわざと偽っているわけではないとも考えている。問題は、名前と中身が一致しているかを 確かめる手段がほとんどない ことだという。

「元の系統は50〜100」

英王室属領ジャージー島の育種会社 Northern Leaf の CEO スティーブン・タン氏は、ほとんどの品種は 50〜100 の元の系統 にさかのぼると見積もる。何年も掛け合わせを繰り返した結果、別の品種として売られているものの多くが、同じ遺伝子が違う形で表れているだけだという。

大麻の種は、性質をそろえるような品種改良がされていない。タン氏によると、同じ袋の種を 10 粒まいても、THC やテルペン(香りの成分)の量がはっきり違う株が育つ。そこから「母親に似た株」「父親に似た株」「その中間」を選べば、非正規の市場ではそれぞれ別の品種として売られうるという。

「トマトの種をまけば、どれもまったく同じトマトができる。大麻ではそうはいかない」(筆者訳)

タン氏は、店で「OGクッシュ」として売られているものも、実際には何千もの違うバリエーションかもしれないと話す。

「偽物が人気になれば、それが元祖になる」

市場の事情も名前と中身のずれを広げている。タン氏によると、サティバ寄りの株は花が咲くまでに時間がかかる。そのため、本来は 約 90 日 かかるはずの品種名で、実際には 約 45 日 で収穫できる株が売られていることが多いという。

ピンククッシュについてもタン氏は、いちばん多く売られているものが、いまではほとんどの買い手にとっての「本物」になっていると話す。古い系統は、昔を知る人の記憶の中に残っているだけだという。

「偽物の品種が人気になれば、多くの人にとってはそれが元祖になる」(筆者訳)

なぜ確かめられないのか

ふつうの農作物では、育種家は 遺伝子バンク(種や苗を保存・管理する施設)にある、出どころが確かな材料から品種づくりを始める。カナダには 1970 年から国の遺伝資源バンクがあるが、大麻は長く禁止されてきたため、同じような施設がない。

品種として正式に登録するには、ほかと区別でき、性質がそろい、世代を重ねても変わらないことが求められる。記事は、いまの大麻でこの基準を満たすものはほとんどないとしている。Leafly や SeedFinder のような品種データベースも、主に記録しているのは 名前と、そう伝えられている系譜 で、DNA ではない。

研究でも「同じ名前、違う中身」

今回の話は取材にもとづくものだが、DNA を調べた研究でも、似た結果が出ている。

  • 米ノーザンコロラド大学の研究(2019 年): コロラド・ワシントン・カリフォルニアの 3 州、20 の店や提供者から 30 品種・122 サンプル を集めて遺伝子を調べた。すべてのサンプルの遺伝的なグループが一致したのは 30 品種中 4 品種 だけで、ほとんどの品種に、ほかと違うサンプルが少なくとも 1 つ混じっていた。違う名前の 2 つのサンプルの遺伝子が一致し、ラベルの付け違いがうかがえる例もあった
  • カナダの研究チームの研究(2015 年): 大麻 81 サンプルとヘンプ 43 サンプルの遺伝子を調べ、「大麻の品種名は、多くの場合、遺伝的に意味のある違いを表していない」と結論づけた

また、28 本の研究をまとめた 2026 年 10 月の総説は、「インディカ」「サティバ」「ハイブリッド」というラベルでは、成分や効き方をほとんど予測できないとしている。分類の考え方は「大麻の分類」でも解説している。

医療用では何が問題になるのか

アレン氏自身も、自己免疫の病気があり医療大麻を使う患者である。アレン氏は、THC の量だけでなく、CBDV のような量の少ない成分が患者にとって大事な場合があると話す。CBDV は、けいれんを抑える働きがあるかどうかが研究されている成分である。

ある品種名が特定の患者に合うと言われても、ほかの会社が同じ名前を別の株につければ、その名前を頼りに選ぶのは「ルーレットのようなもの」(筆者訳)になりかねないという。

英国では、医薬品の規制当局(MHRA)が、欧州の医療大麻に多い「嗜好用っぽい」品種名について、クリニックなどに懸念を伝えてきたと記事は書いている。一方で、品種名は患者が香りの特徴を見分け、同じものを使い続ける手がかりにもなっている、という見方もある。

これからどうなるか

  • 遺伝資源を囲い込む動き: 品種の遺伝子は、いまや企業が大事に守る財産になっている。タン氏は、栽培で生まれる価値の 約 30% が遺伝子によると見積もる。カナダの大手 Organigram は、珍しい成分を多く含む種の系統を優先して使えるよう、米国の遺伝子解析会社 Phylos に最大 1,000 万ドル を出すことを決めた。Aurora Cannabis は 2026 年 5 月、自社の 2 品種についてカナダで育成者権(品種の権利)を取った
  • アレン氏の提案: 国の費用で大麻の遺伝子バンクをつくる、DNA の「指紋」を取って照合できるデータベースをつくる、5〜10 年で登録品種を当たり前にする、の 3 つ。カナダの規制当局などにはすでに提案を出したという
  • タン氏の見通し: 今後 10〜20 年で、何千もある品種名は、ほかより優れた 10 品種ほど に絞られていくと見ている

注意点

  • 今回の記事は 業界紙の取材記事 で、新しい研究の発表ではない。「50〜100 の系統」「約 30%」などの数字は、取材を受けた人の 見積もり である
  • ピンククッシュの「5 社」と「香りがなかった」は、アレン氏の評価で、成分や DNA を調べた結果ではない
  • 紹介した 2 本の遺伝子の研究は、調べた品種やサンプルの数が限られており、市場全体の割合を示すものではない

出典


本記事について

本記事は情報提供を目的としており、大麻の使用を推奨・推進するものではありません。 記載の法制度・統計値は記事公開時点の情報に基づいており、その後変更されている可能性があります。 日本においては、大麻取締法および関連法令により大麻草・大麻製品の所持・使用・栽培・輸出入は規制されています。

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