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産業用の大麻草である ヘンプの畑を増やすと、川の水質や 野鳥の種類の多さによい影響が出る可能性がある。米国の ケンタッキー大学などの研究チームが、州の郡ごとのデータを使って試算し、農業経済の学術誌『Applied Economic Perspectives and Policy』に発表した。

カギになるのは、ヘンプそのものよりも「畑の作物の種類が増えること」だ。ただし効果が出るのは、ヘンプがある程度の広さになってからで、小さな畑が点々とあるだけでは水や生き物への影響は小さいという。ケンタッキー大学の発表を、科学ニュースサイト Phys.org が 2026 年 10 月 26 日に伝えた。

ざっくり言うと

  • ヘンプの作付けが増えると、地域の 作物の種類が増える(作物の多様化)
  • 作物の種類が多い郡ほど、川の水質と 野鳥の多様性がよい傾向があった
  • ただし ヘンプの面積が十分に広くならないと、環境への効果はほとんど出ない

どんな研究か

  • 論文: 「ヘンプ栽培と作物の多様化:ケンタッキー州の生態系サービスへの影響」(英題 Hemp Cultivation and Crop Diversification: Implications for Ecosystem Services in Kentucky)
  • 掲載誌: Applied Economic Perspectives and Policy(2026 年、農業経済の査読つき学術誌)
  • 著者: Yunsun Park(ユンソン・パク)、Seong D. Yun、Brandy E. Phipps、Tyler Mark(タイラー・マーク)、Craig Schluttenhofer の 5 人
  • 所属: ケンタッキー大学のほか、ミシシッピ州立大学、セントラル州立大学の研究者が参加

生態系サービスとは、きれいな水や生き物のすみかのように、自然が人にもたらす恩恵のこと。お金で取り引きされないため、農家の収入には表れにくい。

何をしたのか

  1. ヘンプが増えた場合のシミュレーション: ケンタッキー州の農地のうち、ヘンプが 1% から 10% を占めるまで、段階的に増やした場合を計算した
  2. 郡ごとのデータの分析: 州内の郡のデータを年ごとに追い、作物の種類の多さと環境の指標の関係を統計で調べた
  3. 2 つを組み合わせる: 「ヘンプが増える → 作物の種類が増える → 環境の指標が変わる」という流れで、効果を見積もった

環境の指標には、次のものが使われた。

分野指標
水質水の透明度、水に溶けている酸素の量、リンの量
生き物野鳥の多様性(すみかの健全さの目安としてよく使われる)

何が分かったのか

  • ヘンプの割合を増やすどのシナリオでも、作物の種類の多さは着実に上がった
  • 作物の種類が多いほど、水質がよく、野鳥の種類も多い傾向があった
  • その結果、ヘンプによる作物の多様化は、水質と野鳥の多様性を通じて、お金に換算しにくい恩恵を生むと著者らは結論づけた

「広さ」が分かれ目

研究チームは、効果が出るのは ヘンプがある程度の割合を占めてからだと強調している。小規模な畑が点々とあるだけでは、個々の農家の収入にはなっても、水や野生生物への影響はほとんどないという。

そのため著者らは、小規模農家を支える政策だけでは環境面の効果は限られ、多くの小規模農家がヘンプ栽培に参加するよう後押しする政策が必要だとしている。

共著者でケンタッキー大学の農業経済学者 タイラー・マーク氏は、「収益性は大事だが、話の一部にすぎない」「ヘンプの作付けが広がるのなら、こうした影響も理解し、数字で示す必要がある」(筆者訳)と話している。

背景:ケンタッキー州とヘンプ

米農務省(USDA)の 2026 年の全米ヘンプ報告によると、ケンタッキー州の農家が 2025 年に植えた産業用ヘンプは 4,800 エーカー(約 1,940 ヘクタール)。今回の試算の「農地の 10%」は、いまの規模よりずっと大きい想定である。

ヘンプは、繊維(茎)や種を目的に育てる作物で、酔いをもたらす成分の THC はわずかしか含まない。サイトでは、ヘンプの種の搾りかすからプラスチックをつくる研究(「ヘンプの種の搾りかすから、強さ86%増しの生分解プラスチック」)や、種を目的に育てるフィンランドの品種 FINOLA、栃木県で開発された とちぎしろ も紹介している。

注意点

  • シミュレーションと統計による試算で、実際にヘンプを増やして水質や野鳥を測った実験ではない
  • 郡ごとのデータの分析は 関係を示すもので、作物の種類が増えたこと「だけ」で水質がよくなったとまでは言えない
  • 論文の本文は有料で、本記事では 水質や野鳥がどれだけ変わるかの具体的な数字は確認できなかった。数字は要旨と大学の発表にもとづく
  • 対象は ケンタッキー州で、気候や農業のかたちが違う地域にそのまま当てはまるとは限らない
  • ヘンプでなくても、作物の種類が増えれば同じような効果が出る可能性がある。研究はヘンプを「作物を増やす手段の一つ」として扱っている

出典

出典 — Sources

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