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品種図鑑 — サティバ — Type I (THC 優位)

ヘイズ(Haze) — 子孫は無数、原株はもう見つからないサティバの源流

文責 ·

品種データシート

系統
サティバ
化学型
Type I (THC 優位)
THC
原株の検査値は残っていない
CBD
<1%
由来
米国カリフォルニア州サンタクルーズ。1960 年代末〜1970 年代初頭、「Haze Brothers」と呼ばれる兄弟によるとされる
親系統
メキシコのランドレース × コロンビアのランドレース × タイのランドレース × 南インドのランドレース
主要テルペン
#terpinolene#myrcene#limonene
風味
スパイス柑橘お香土
効果傾向
高揚感頭の冴え多弁創造的な気分

Haze(ヘイズ)は、サティバ系の大麻の源流とされる品種である。Original Haze とも呼ばれる。

当サイトの品種図鑑では、これまでに 10 を超える品種の親や祖先として名前が出てきた。Super Silver Haze、Jack Herer、Blue Dream、Purple Haze、Strawberry Cough——いずれも系譜をたどると Haze に行き着くとされる。

それなのに、原株はもうほとんど見つからない。

ひとことで言うと

子孫が世界中にあふれているのに、本体は消えかけている株。理由ははっきりしていて、育てるのが大変すぎたからである。

花が咲き終わるまでに 4 か月以上かかる。背丈は大きく伸び、収量は少ない。商品として扱いやすい性質ではなかった。だから Haze は「そのまま育てる品種」ではなく、**ほかの品種に性質を渡す「材料」**として生き延びた。

そして来歴は、ほぼすべてが 口伝である。

生まれ方

広く語られている話はこうだ。

1960 年代末から 1970 年代初頭、米国カリフォルニア州の海辺の町 サンタクルーズ。**「Haze Brothers(ヘイズ兄弟)」**と呼ばれる二人が、各地から持ち込まれた ランドレース(その土地で長く育てられてきた在来の系統)を掛け合わせた。

兄弟は R. Haze と J. Haze と記されることが多いが、これは 偽名である。本名は公にされていない。

話は資料によって食い違う

年代も、材料も、一致していない。

よく語られる説別の説
年代1970 年代初頭1960 年代(Leafly)
材料メキシコ × コロンビアの交配に タイを重ね、最後に 南インドの雄株を掛けたコロンビアの在来系統 3 つだけから作った(Leafly の系譜解説)

複数の資料が、Haze の来歴は文書ではなく、栽培者のあいだの言い伝えで受け継がれてきたと断っている。どれが正しいかを確かめる手段は、現時点ではない。

ランドレースとは何かについては、コラム「ランドレースとは何か——土地が育てた大麻の”原種”」も参照。

なぜ広まらなかったのか

Haze の最大の特徴は、とにかく時間がかかることである。

  • 開花期間は 12〜16 週以上とする資料が多い。16〜20 週、表現型によっては 6 か月近くかかるとする資料もある。一般的な品種の 8〜9 週と比べると、倍近い
  • 開花に切り替えた後に 背丈が 2〜3 倍に伸びるため、屋内では扱いにくい
  • 時間がかかるわりに、収量は平均より少ない

赤道に近い土地のサティバの性質を色濃く残しているため、秋が早く来る緯度の高い地域では、屋外で花を咲かせきれない。カリフォルニアの栽培者にとっても扱いが難しく、ある資料は 1970 年代末には忘れられかけていたと書いている。

オランダへ渡る

Haze を救ったのは、ある人物の移住だった。

サム・ザ・スカンクマン(本名 David Watson)。Skunk #1 を作った育種家として知られる人物で、Haze 兄弟と接点があり、Haze の遺伝資源を手にしていたとされる。

1980 年代(1984 年とする資料もある)、彼は オランダへ移り、Haze を含む大量の種子を持ち込んだ。そこで Haze を受け継いだのが、オーストラリア出身の育種家 ネヴィル・ショーンメーカーズである。彼の種子会社 The Seed Bank は、のちに Sensi Seeds へとつながっていく。

ネヴィルが作った Neville’s Haze は、Haze の系統の一つ(Haze A)に Northern Lights #5 を掛け、さらに別の Haze 系統(Haze C)を重ねたものとされる。Haze に Northern Lights を足して、育てやすさを補う——この組み合わせ方は、のちの Haze 系品種の定番になった。

「Haze」は品種名から、系統の名前になった

いま「Haze」という言葉は、1 つの株の名前というより、一族の名前として使われている。数百の品種が名前に Haze を含む。

そのため、名前に Haze とついていても、Original Haze の直系とは限らない。

  • Amnesia Haze — 当サイトでは Haze とランドレース各種を親としているが、タイ・アフガン・ハワイの在来系統から作られ、Original Haze とは結びつけない資料もある
  • Purple Haze — 当サイトでは Purple Thai × Haze としているが、Original Haze から出た表現型の一つとする資料もある

同じ言葉が、系譜を示す場合と、「サティバらしい」という性格を示すラベルとして使われる場合がある。品種名と遺伝的な実態のずれは、Haze に限らずこの分野の共通の問題である。

形態と特徴

  • 系統バランス: サティバ。ただし原株の遺伝的な組成を測った記録はない
  • 草姿: 背が高く、枝が長く伸びる。葉は細い
  • 開花期間: 12〜16 週以上(資料によってはそれ以上)
  • 香り: スパイス × 柑橘 × 土。お香にたとえられることも多い

化学組成

カンナビノイド

原株の検査値は残っていない。 Haze が生まれた 1970 年前後には、市販品の成分を検査する制度がなかった。現在「Haze」として流通しているものの数値は、それぞれ別の系統の値である。

化学型は Type I(THC 優位) と考えられる。

主要テルペン

テルペンは植物が持つ香り成分で、品種ごとの香りの個性をつくる。Haze で挙げられる主なものは次のとおり:

  • テルピノレン(terpinolene): 松やかすかな柑橘、ハーブを思わせる
  • β-ミルセン(myrcene): 土やハーブを思わせる含み
  • D-リモネン(limonene): 柑橘の明るさ

ただし どれが主役かは資料によって割れている。テルピノレンを筆頭に挙げるもの、リモネンを挙げるもの、ミルセンを挙げるものがある。どの株を測ったかで結果が変わるため、確定的なことは言えない。

なお テルピノレンは、品種表示ではあまり見かけない成分だが、6 品種をまたいで分析したある研究では 上位 5 種に入っていた(「大麻から227種類のテルペンが検出された」参照)。

効果プロファイル(報告されている傾向)

サティバの典型として、以下の傾向が語られてきた:

  • 頭が冴える方向の高揚感
  • 口数が増える、気分が明るくなるという報告
  • 身体が重くなる感覚は少ないとされる

ただし原株がほぼ失われているため、これらは Haze 系の品種全体について語られてきた傾向として読むのが正確である。大規模臨床試験で確立された効能はない。

副作用(報告されているもの)

  • 口渇・眼の乾燥
  • 不安感や落ち着かなさ——高揚系の品種で報告されやすい
  • 心拍の上昇

派生・関連品種

Haze の重要性は、何を作る材料になったかにある。

文化的意義

  • 「サティバ=頭に来る」という通説の源。サティバ系は高揚的、インディカ系は鎮静的——このイメージを最も強く形づくったのが Haze 系だとされる。ただしこの二分法自体に科学的な限界があることは、コラム「「インディカ=眠い」は本当か」で扱った
  • 栽培のしやすさが、品種の運命を決めた例。性質が評価されても、4 か月以上かかる株は商品として残りにくい。Haze は ほかの品種の中に溶け込むことで生き延びた
  • 記録の無い時代の株でもある。偽名の兄弟、口伝の系譜、失われた原株。現代の品種名がしばしば実態とずれているのは、出発点からして書かれた記録がないことと無関係ではない。同じく口伝で受け継がれた源流の株としては、Triangle Kush がある

日本国内における規制

日本国内では大麻草・大麻製品の 所持・使用・栽培・輸出入は大麻取締法および関連法令(現・大麻草の栽培の規制に関する法律、麻薬及び向精神薬取締法)により規制 されている。Haze は嗜好用・医療用が合法な地域で語られてきた品種であり、本記事は文化的・植物学的な解説を目的としている。日本では所持・使用は違法であり、本記事は特定の使用を推奨するものではない。

出典 — Sources

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